飼料の調整・貯蔵・施設・機器と利用
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2 . 飼料の調製・貯蔵・施設・機器と利用
粗飼料の調整作業研究は,1955年後半から畜力用機械利用による牧草収穫,乾草調整に代って,トラクタ用各種作業機の導入・利用法,開発・改良研究の結果,省力化,機械化が進んだ。さらに,1965年以降,放草乾燥機やサイロ,とくに気密サイロなど飼料調製・貯蔵施設,さらに1971年ヘイキューバの導入に伴い,粗飼料の固形飼料化研究が開始された。これらにより,天候に支配されずに良質粗飼料を得るための施設,作業方法の研究が進められ,技術は実用の域に達している。
また,高水分飼料としてのサイレージ調製貯蔵施設(垂直型,水平型サイロ)から,気密サイロ利用を中心に,低中水分サイレージ調製技術研究が急速に進展している。
( 1 ) 乾草の調整・貯蔵施設と利用
従来,牧草の乾燥は自然乾燥を主体としているが,気象条件が不安定で,良質乾草調製が困難な地域では,仕上げ乾燥用としての人工乾燥法の研究が行われた。その一つに1963年英国から導入された,空冷ディーゼルエンジンの冷却空気を利用する,乾燥方式について検討され,処理能力は1シーズン120~150トンであることが実証された42)。
また,乾草の調製と貯蔵の両機能を持つ施設であるヘイタワの必要構造,これに詰込む材料水分(40~45%程度),風量水分比(0.005㎡/s以上)が明らかにされた。その後,ヘイタワの現地利用試験が行われり,ロードワゴン体系で1日5トンの積込みを可能とした。石束らは,圃場で牧草を自然乾燥する場合の牧草含水率の変化と,塔型牧草乾燥施設に堆積された牧草の乾燥過程を明らかにし,これをモデル化し,シミュレーションの結果より,塔型乾燥施設に詰込む牧草の含水率は50%以下,できれば40%を目標にするのが適切であるとした16)。 これらの成果を総括して,北海道におけるヘイタワの利用指針を策定した。九州では通風貯蔵乾燥法を開発し、30~40%に予乾し1~1.2m堆積牧草を,透過性の良いピニールフィルムやハイロンなどの屋根から,太陽輻射熱と送風により6~10日で含水率10%程度まで乾燥させうる。減少係数〔日射量当り乾減含水率%/cal〕と初期含水率との間に次の関係式が成立する。
減少係数=(0.0004x初期含水率)-0.006
型式として野積み型,地下穴型,施設型それぞれの得失を増田らが明らかにした23,24)。
また,小島らは集熱装置と乾燥を組合わせた太陽然利用牧草乾燥施設の性能調査を行い,乾草生産経費は,火力乾燥に比べて10~18%であった22)。
わが国では困難なマメ科牧草の仕上乾燥装置が実用化されているが、積込みと積出しにかなり労力を要する点を,野村は横送り方式による熟風乾燥を自動化への改善策を検討した35)。
佐藤らは,稲わらを家畜の飼料として利用を促進するため,結束わらが積込み取出しなど,取扱い運搬作業の合理化と,結束わらの性状や形態の持つ特長を活かした乾燥装置(運搬容器と乾燥室を兼ねるコンテナを持つ)を試作した結果,収積運搬に要する労力が,従来の人力作業の1/3.4に省力化された47)。
千場らは,幼齢期の牛の育成飼養に適する粗飼料としてのヘイフレークを調製する,移動式牧草乾燥機(ヘイフレーカ)の乾燥性能とその得失について検討した11)。
( 2 ) サイロと関連施設・機械の利用
サイレージ調製は,従来からの研究によって,小規模のものあるいはトウモロコシのような特定作物について,ある程度明らかにされたが,牧草を主体とした大量調製技術が未解決の状態であった。乳・肉生産が全国的に普及し専業化,大規模化に伴い,粗飼料の大量調製貯蔵技術確立の要請が強くなった。このため,サイレージ生産について,気密サイロを中心とする垂直型サイロや,パンカーサイロなど水平型サイロ及び調製貯蔵に関する試験研究が盛んに行われた15,18)。 気密サイロは,1965年農林水産省畜産試験場に初めて設置され,その後農用地開発公団(当時農地開発機械公団)を,事業主体に発足した共同利用模範牧場設置事業39),北海道大学農場43)にと,全国的に導入・設置され,良質な中低水分サイレージ調製・利用試験研究が行われた34,50,60)。
1968~1971年にわたる農林水産技術会議特別研究が開始されて,高品質サイレージを大量調製するための基礎要因解析,気密サイロの効率的利用法,わが国に適合し,かつ安価なフリジェールサイロ,バキュームスタックサイロ,クランプサイロなどの開発研究や,ヘイレージ調製法,大量調理上のサイロ型式の選択と利用。そのための飼養技術,規模別機械装備と作業法,利用方式などが解明された38)。
1971年頃から国産気密サイロの開発も進み,その強度が強くサイロの自重も軽くてすむスチールや,耐酸,耐アルカリ性に富み,軽く取扱い易いFRP(強化プラスチック)サイロについて研究が行われた4,10)。FRP気密サイロほ,耐久性に多少の問題があるので川村らは,サイロ内の底面圧,側面圧,空気圧及び温度などを求め工学的な検討を行った20)。その後,1978年北海道で,トウモロコシを詰め込んだ直後のサイロ倒壊事故が発生したため,北海道では行政,研究,普及各部門を一体とする事故原因解明のため委員会を設け検討された。下名迫はサイロの構造・施工材料及び耐久性(強度)に関する実態調査を行い.不完全密閉によるサイレージの腐敗、サイロ壁面のひび割れ,内面腐食などの問題点を摘出した49)。また,中川西らは,サイロ構造強度にかかわる設計資料を得ると共に,サイロの安全利用法を究明するねらいで,サイロに詰込まれた材料の密度,挙動と,それに伴うサイロ底面と筒体に加わる力を測定した。その繕果サイロの高さ・径比の小さな構造開発,デストリピュータ及び排汁装置の改善.高水分材料用サイロ設計規準の設定など対策の必要性を提言した28)。
サイロ関連作業の主なものとして,プロワによる詰込み.踏圧,サイレージ取出し各作業が必要である。フォレージブロワの性能について川上らが研究した19)。気密サイロからサイレージ取出し機械については、サイロ底部から取出すポトムアンローダと上部から取出すトップアンローダの性能,開発改良研究が進められている13,55,56,57)。
渡辺はサイロ底部からサイレージ取出し可能な,小規模サイロによる年間循環利用の要請が強い大型気密サイロ利用が困難な一般農家を対象に,角型の傾斜サイ回を開発し,その効率的な利用について検討した。その結果,家畜の飼養規模に関係するが,年間循環効率利用が可能である。傾斜サイロは山間地帯の地形を利用した勾配接地式とし,∠65°勾配では容積規模を30㎡以内にとどめるべきであると提言している61)。
水平型サイロ関連研究では,パンカーサイロ対象の太陽熱利用による吸引式通風乾燥法が58),水平型サイロからサイレージ取出し積込み作業機械化研究1),補助サイロとしてバックサイロによるサイレージ調製32)及び調製機の試作31),貯蔵技術3)に関して研究しその成果は実用技術の開発普及に寄与している。
さらに,サイロの機能や作業の改善あるいは,高品質サイレージを調製するための周辺技術研究,サイレージ材料の物理性に関する研究も見のがせない2,33,36,41,45,46)。
( 3 ) 粗飼料の固形化
わが国の固形飼料であるヘイキュープの輸入は,1968年に始まる。流通粗飼料の需要が年々増加する傾向の中で,粗飼料の利用と流通の効率化をはかるには,圧縮成形化することで運搬性,質的規格性ならびに保存性を向上することが最適と考えられ,固形飼料の国産化に対する関心が高まった。1971年には流通粗飼料生産実験施設設置事業によって,岩手県及び北海道に初めて,ヘイキュープパラントが設置された。
これを機に,導入された各種プラントについて、高畑らにより性能の確認,運転操作技術が牧草乾燥性能ならびに成形性能に及ぼす影響,プラントの稼働実態,ヘイキューバの耐久性などが検討され,多くのヘイキューブ生産の技術的知見が得られた6,7,51,52,53)。また国産ヘイキゴープの製造費の試算を行ない,採算性を得るための操作条件について,プラントの規模別に明らかにした54)。
その後,粉砕された材料を圧縮成形されたベレットに対して、粉砕されない切断長の長い材料を圧縮成形された,大型固形飼料であるヘイウエハが望まれるようになった。これに対応して,わが国の実情に適した大型固形粗飼料の成形化技術を確立する目標に沿って多くの人々が研究を行い,粗飼料の圧縮機構と圧縮性の解明8,25),粗飼料の成型性9,27,29),加圧シリンダの上昇温度が成形性への影響54)について解明した。さらに中らは半乾燥圧縮成形粗飼料のマイクロ波加熱乾燥法の究明26),国府田らによる圧縮成形過程における,エネルギー収支及び成形材料の物性値21)千場らによるヘイキユーパを構成する乾燥機及び成形機や,成形部品の改良研究が進められ12,14,48),粗飼料の固形化技術確立に貢献した。
( 4 ) 牧草成分分画調製施設と利用
最近,世界的に進められている開発研究の一つに,牧草成分分画調製技術がある。これは,牧草・飼料作物などの高水分材料を圧搾して,蛋白質に富んだジュースと,低水分化されたケーキに分画した後,それぞれに各種処理を加えて,飼料(あるいは食糧)を調製する新しい技術で,わが国でも中川西らにより,実験施設を利用して,想定される各種機構の脱水特性ならびに取扱性の検討,脱水機の試作,改良及び利用研究が進められている30,44)。
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