:歴史を変えた気候大変動 [著]ブライアン・フェイガン
- 愛でたい文庫 - BOOK: asahi.com(朝日新聞社)
[掲載]週刊朝日2009年4月17日号
* [評者]温水ゆかり
■ディケンズも小氷河期を生きた
なるほど、歴史には地政学もあるが、気候学もあるなと思わせる好著。“最近の地球はおかしい”といった“現世視野”でないのがいい。
に、しても、1300年頃から1850年頃まで約500年間、リトル・アイス・エイジ=小氷河期と呼ぶべき時期があったとは。ただし、ずっと極寒だった訳ではなく、気候がめまぐるしく変動したらしい。この間、黒死病、イギリスの囲い込み農業の開始、フランス革命やアイルランドのポテト飢饉があった。自分で耕し、食べ、あげくに重税を課された農民が圧倒的多数だった時代。飢饉(天地災害)と飢餓(統治者の無策)が人類の歴史を作ってきた。自然に翻弄されたこの歴史に、化石燃料の使用という人為的要因が乗っかったのが現代という訳である。人間は恐竜と同じ運命を辿るのか!?
それは各自で考えて頂くとして、本書の話題は広い。骨まで冷える描写が巧いディケンズは1690年以来、最も寒かった10年間に子供時代を過ごしているとか、寒さ厳しいスイスのバイロン邸での夜伽話からメアリー・シェリーのフランケンシュタインは生まれたとか、文学や絵画の話題も豊富。本書を親しみやすい読み物にしている。
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東郷えりか、桃井緑美子訳"
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