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2009年1月5日月曜日

注目集める小水力発電/山村の水は「財産」自然の恵み生かす【甲信越】

注目集める小水力発電/山村の水は「財産」自然の恵み生かす【甲信越】
in 日本農業新聞

農業用水を使った小水力発電が注目されている。二酸化炭素の放出を防ぐ地球温暖化防止対策に結びつくエネルギー源の1つとして、期待が集まる。農業用水だけでも原子力発電1、2基分の130万キロワットを発電できるとの見方もあるほどだ。全国各地で農業用水や、渓流の水などを使って山村のエネルギーを取り出し、利用している現状を紹介する。

■生活用水 少量でもいける 鳥獣害防ぐ電柵に/長野・中川村

南アルプスを背にした長野県中川村飯沼地区の3戸の集落で、生活用水を利用した小水力発電システムが活躍している。生活道路の夜間の外灯照明、鳥獣害防止用の電気牧柵などの電源に使われ、中山間地域の農家の生活に欠かせない存在になった。

同県辰野町で電気設備工事業を営む倉澤久人さん(63)が実家のある集落に2年前、自作の発電装置を用水マンホール上に設置した。用水の利用許諾は村と集落3戸から得た。

用水の流量は毎分3~4リットルで、水の落差は8メートル。わずかな落水で最大300ワットを発電する。発電装置は、12枚の羽根の付いた直径28センチの水車と発電機を内臓。装置は重さ約20キロで、容易に持ち運びできる。

装置軽量化の秘けつは増速機を省いたことだ。通常の発電機は増速機がないと発電できないが、装置が大きくなってコストがかさみ、動力ロスも大きい。

そこで倉澤さんは増速機を使わずに、永久磁石を備え毎分300回転で発電する発電機を開発した。「簡単な構造で故障しにくく、水路の詰まりに気をつければいい。最低でも5年間の稼働は保証する」と倉澤さん。

同集落はこの電力で、道路沿いの5つの外灯を照らすほか、家屋周辺の農地を囲む電気牧柵も稼働させる。農地は約50アールで牧柵は周囲約300メートル分。猿やイノシシから農作物を守る。

倉澤さんは発電装置を約30万円で販売する。配管用の機材を合わせてもコストは30万円台。充電器やバッテリーなどを10万円程度で装備すれば、充電して家庭内でも利用できる。この発電装置は現在、長野や埼玉の小学校、民間企業の研修施設用など、数件で利用されている。

倉澤さんは「伊那谷は傾斜地が多く水源も多いので小水力発電に向く。豊富な水資源を生かさない手はない」と話す。

■全国でモデル事業 採算や水利権課題

小水力発電に明確な定義はないが、一般に1000キロワット以下の発電能力のものを指す。100キロワット以下をマイクロ発電、数戸の家庭で必要な10キロワット以下をピコ発電ということもある。

2004年には農水省と経済産業省、国土交通省が「農業用水を利用した小水力発電に係る関係省庁連絡会」を設置。08年は全国7地区で100キロワット以下のマイクロ発電のモデル事業を検討する。民間でも05年に全国小水力利用推進協議会が発足した。発電機メーカーや各地の民間団体が加入、情報交換などをしている。

課題は採算性と水利権。農業用水は周囲の整地などにかかるコストが少なく、導入自体は容易だ。太陽光発電に比べれば施設費は1、2割で済む。しかし太陽光発電と比べ、行政の支援が少ない。太陽光発電が普及したのは余剰電力が使用価格と同じ程度(1キロワット時20円前後)で買い取られていたためだ。その点、小水力は、おおむね10円以下で買い取るケースが多く、採算は厳しい。しかし、夜でも発電できる長所もあり、農村の豊富な新エネルギーとして期待がかかる。

■売電目的53施設 中国地方はJAがけん引

中国地方では全国でも珍しく、JAが小水力発電に組織的に取り組み、現在も53施設が稼働する。電力を直接利用するのではなく、電力会社への売電が特徴だ。

当初は過疎地の電化とJAの経営資源としての役割を担った。今では売電単価の問題で、「経営に大きく寄与する状況ではないが、文化を伝える施設として価値がある」(中国小水力発電協会事務局のJA広島中央会)という。温暖化防止に寄与するという新たな価値も訴えている。

本格的に中国地方に小水力発電が導入されたのは1950年。国の電気導入事業に乗って16カ所に導入され、52年には「中国小水力発電協会」ができた。

小水力発電の導入は、農村地帯の電化を進めるため。同協会「創立50年のあゆみ」によると、当時の「未点灯世帯は二十数万世帯といわれ、電力不足に至ってはその数倍」だった。

一時は90カ所を超えた発電施設。50年代に造られたものが大半で、老朽化したものもあるが、今も存在価値はある。温暖化防止で小水力発電はうってつけだ。

課題は収益性。山間部の水を利用するが、運転経費はかかる。売電単価は上がらず、「修理するにもかなりの経費がかかる」(JA佐伯中央)と経営は苦しいが、「先人の造った施設で、JAの使命を思い起こす文化的な価値もある」(同)。

■らせん水車電力 低価格で実用化へ

富山県立大学(射水市)は、かつて農業用動力として普及した「らせん(螺旋)水車」を使い、小水力発電システムを開発中だ。らせん水車は、こう配の低い、ゆるやかな農業用水の発電に向く。発電効率を高めるなどし、1、2年後の実用化を目指す。

らせん水車は、鉄や木の軸の周りに鉄板をらせん状に張り合わせて造る。県内で1920年ごろに発明された。小型で持ち運べ、水田脇の農業用水に取り付けて、40年代までは脱穀作業や精米、わら加工などの農業動力源となった。全国に普及し、ピーク時には2万台程度が利用されたが、農村電化の動きとともに衰退した。

同大学自然エネルギー農業利用研究会は、らせん水車が傾斜のゆるやかな富山平野の農業用水向きに造られたことに注目。中心メンバーである短期大学部の瀧本裕士准教授は「落差1メートルでも毎秒0.2立方メートルの水量があれば、理論上は2キロワットの出力が得られる」と見る。同研究会は「低落差、低流量でいかに効率良く水車を回転させるか」を研究し、瀧本准教授は「電機メーカーとも協力し、2008年度中には100万円以内で購入できる発電システムを開発する計画だ」という。

南砺市高屋地区の「螺旋水車の館」には今も、らせん水車が残る。発電施設を常設し、同大学も実験に使う。高屋螺旋水車保存会の細川修代表(68)は「40年代までは各農家に1台のらせん水車があった。あちらこちらに復活すればうれしい」と目を細める。

■発電システム 水路の落差工利用

栃木県那須塩原市の那須野ヶ原土地改良区連合は、農業用水路の落差工に発電システムを設置して発電をしている。土地改良区内で使う施設の電力をまかない、維持管理費を減らしている。

同連合に属する改良区は5市町村に及び、受益面積は約4300ヘクタール。農業用水供給用の水路は、約4万ヘクタールの広大な扇状地に網の目のように張り巡らされ、地上に出ている開水路だけで164キロある。冬期も含め、出力の安定に必要な常時流水状態の水路も多い。

改良区が導入している発電システムは最大出力30キロワット。この発電に必要な水路の落差は2メートルで、毎秒0.5トン以上の流量があればよい。上流から下流までの標高は600~200メートル。標高差が400メートルもあり、流れを弱めて下流に送るための落差工は数多くある。

農水省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助で、2005年に4基の発電施設を設置。来年はさらに2基の導入を計画する。発生電力はいったん東京電力に送電し、同社の送・配電線を経て利用する。1992年に調整池への流入落差を利用し、導入した340キロワットの発電と合わせ、最終的には改良区の諸施設の維持管理に必要な最大1000キロ余りの電力をまかなう構想だ。

同連合の星野恵美子事務局長は「工場で完成した水車発電機を持ってくるので、低コストかつ短期間で設置できる」と、メリットを挙げる。

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