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2009年8月23日日曜日

食卓のむこうで:湖国農業の明日

食卓のむこうで:湖国農業の明日
- 毎日jp(毎日新聞)
: "食卓のむこうで

◇大量生産・大量消費への疑問 本物求め徹底的に挑戦

「まさか自分が米を作ることになるなんて、これっぽっちも思っていなかった」。高島市新旭町針江の農園「針江のんきぃふぁーむ」を両親や弟と一緒に営む石津大輔さん(27)は話す。

大輔さんは古着店経営から農家に転じた異色の経歴の持ち主だ。高校時代からファッションに興味を持ち、服飾専門学校に在学中の02年、知人の紹介で大阪・本町に若者向けの古着屋を出した。顧客は徐々に増え、経営は順調だった。

だが、古着の買い付けに国内外を飛び回るうち、違和感を覚え始める。山積みの古着の中に、最近の服もたくさん含まれていた。「流行の移り変わりとともに、まだ新しい衣服が大量に捨てられる」。大量生産・大量消費への疑問が頭をもたげた。

そんな折に帰省し、十数年前から有機農業を営む父文雄さん(60)と酒を酌み交わした。多くは語らないが、手作りの米を消費者に届けてきた父の背中に「これは本物だと思った」。決意を固めた05年冬、後を継がせてもらえるよう、文雄さんに頭を下げた。その後、大阪と高島を行き来して農業を学び、やがて大阪の店はたたんだ。

所有する農地約18ヘクタールのうち約14ヘクタールが水田だが、大輔さんが農業を始めたころ、完全な無農薬・無化学肥料栽培(有機栽培)の水田はわずか6分の1だった。「本物を求める以上は徹底的にやりたい」と思った大輔さんは有機農業の県内先駆者を湖北町に訪ねて教えを請い、稲作に関する本も読みあさった。

こうして得た知識を実践するのは大変だった。収穫率を上げるために毎朝4時に起きて徹底的に水位を管理した。また、有機以外の田でも化学肥料の使用を一切なくした。大輔さんが農業を始めて3年目の昨年、有機栽培面積は当初と比べ倍増した。インターネット販売や古着屋時代に知り合った飲食店への直販で販路拡大も目覚しい。


ただ、輸入品との価格競争にさらされる昨今、農業経営に成功することは簡単ではない。同世代の生産者には月収10万円に満たない人もいる。農業従事者の高齢化が叫ばれて久しいが、「だれもが重労働に見合う対価が得られれば頑張れるだろうが、この状況では……」とため息をつく。


しかし、大輔さんはいい作物を作ることで厳しい経営環境に立ち向かおうと強い決意を持つ。「輸入農産物を否定しないし、安い品物を求める消費者の気持ちは十分に理解できる。しかし、有機農産物の価値をもっと知ってもらいたい。そして、買いたいと思っていただけるような作物を作るために努力を続けていきたい」と力を込めた。


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