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2009年8月11日火曜日

オーガニックを否定した英政府論文に自然派が猛反発

ポイント:
オーガニックであれば、その野菜の栄養素に何か特別な効果があるというのは疑問。
むしろ、オーガニックの本来の意味は「不要な農薬などを与えず、人間にも自然にも負荷を
与えないことにあると思うのだが。


オーガニックを否定した英政府論文に自然派が猛反発
――ニュースな英語(gooニュース・ニュースな英語)

gooニュース・ニュースな英語2009年8月3日(月)10:00
■本日の言葉「make an informed choice」(情報にもとづき選択する)■


国際ニュースで使われる英語をご紹介するこの月曜コラム、今週は「有機野菜は健康に無関係?」という、多くの人に衝撃を与えた英政府発の調査報告についてです。「そんな、まさか!」という悲鳴が、パソコン画面の向こうから聞こえるようでした。(gooニュース 加藤祐子)


○有機野菜は栄養価がとりわけ高い訳では?


英食品基準庁(FSA)が「有機野菜を食べても、化学肥料や殺虫剤を使って栽培した野菜を食べても、栄養価はたいして変わらない。肉や乳製品、卵についても同様」「その他の健康上のメリットも特にない」という研究結果を発表したという7月29日付のBBC記事を見つけたとき、パソコン画面のこちら側でも私も「うっそやーー」と小さく叫んでいました。


同日付の「米臨床栄養学紀要」で発表された論文によると、FSAの委託を受けた調査チームは過去50年間にわたる有機食品に関する162の文献を検証した結果、52の文献から、この結論に達したそうです。もっとも、有機農法による食品とそうでない食品では、たとえば前者の方がベータカロチンが53.7%高いとかフラボノイドが38.4%高いとか、タンパク質が12.7%高いとか、亜鉛が11.3%とかの違いは認められたのですが、それでも「消費者の健康に影響を与えるほどの違いではない」ということで、「栄養価はたいした変わらない」という結論に。また、殺虫剤の使用・不使用による影響や、有機農法が環境に与える影響は調べていないそうです。


その上でFSAの担当者は、「どういう食品を食べるか私たちが、きちんとした情報を得て選択する(to make informed choices)ために、正確な情報の提供は必要不可欠なことです」と主張。


○栄養価が高いというデータもあるが


この発表を受けて、英国ではオーガニック食品を支持する人たちが、この発表に大きく反発。英タイムズによると、FSAには反論メールが殺到したそうです。


有機農家の代表団体「英土壌協会(Soil Association)」は、FSAがオーガニック食品の有用性を示す文献を無視し、殺虫剤が人体に与える長期的な影響を無視し、上にあげたような栄養価の違いを過小評価していると批判しています。


つまり以前にもご紹介した「touched a nerve(神経に触れる、イラッとさせる)」という表現が、今回のこのFSA報告に対する反応にもあてはまるようです。オーガニック支持派の今の状態を「vexed(イラッとしている、ムッとしている)」とも言います。


なぜかというとこのFSA論文は確かに「informed choice」のための情報を提供したわけですが、それによって「オーガニック=善」と確信していた人たちの「way of life(生き方)」そのものを否定したと、そう受け止められたからだと思います。つまり「あなたたちが今まで科学的裏付けがあると思って、わざわざ高いお金を払って追求してきた暮らし方は、科学的裏付けのない思い込みに過ぎないのですよ」と言われたと。「王様は裸だ」というか「あなたたちの信仰は迷信だ」と言われたというか。


○自然に帰るにはお金がかかる


日本でも最近ではスーパーでも(割高ですが)有機野菜が変えるようになりましたし、有機野菜を売りにしているレストランもかなり増えてきました。けれども私がイギリスに住んでいた1990年ごろ、東京ではオーガニック専門店すらまだまだ珍しかったのですが、イギリスでは地方都市にも大きな専門店があり、スーパーでもかなりの品揃えがありました。日本で言うところの漢方薬にあたる薬草治療(herbal remedy)の専門店もありました(その後、日本にも出店したのでとても嬉しかったです)。下手をすると6割くらい割高な値段を払っても無農薬にこだわり、できるだけ化学薬品を体に入れたくないという考えが、当然のように消費行動に結びついて商品経済に組み込まれている様子が、当時の私にはかなり珍しかったのを覚えています。


産業革命以前の人間社会では「自然に帰れ」などとわざわざルソーに言われる必要もなく、自然は身の回りにあって当たり前のもの、むしろ畏怖すべきものでした。対して、産業革命が真っ先に起きて日本よりもずっと早くに工業化が進んだ英国では、日本よりもずっと早くに自然回帰・自然保護運動が反動として起こり、よって「オーガニック」を尊重する気風は日本よりもずっと根深く、「信仰」めいたところがあります。自然との関係を日本よりも早くに失いそうになった現代イギリスは、現代日本人よりもはるかに必死に意識的に、自然とのつながりを死守しようとしているように感じるのです。


一方で日本でもそうですが、イギリスでもアメリカでも、オーガニック食品はそうでない食品よりも割高なので、「私はオーガニックを選ぶ」と言えるのはそれだけの経済的余裕があるということでもあり、ここに「オーガニック=金持ちの道楽」と見なす反発が生まれがちなのも事実です(たとえばニューヨークでは「ファストフード、インスタント食品=貧困家庭の食べ物」「無農薬な有機食品=金持ちの食べ物」という構図がはっきりしています。そして「肥満=貧乏」「均整のとれた体=経済的余裕」という逆転構図も)。


なので今回のFSA論文にまつわる議論にはそういう経済格差の側面もあって、タイムズやBBCの記事に登場する街の人たちの反応も「オーガニック野菜の方が絶対においしいから止めない」「有機農法の方が環境に優しいから止めない」というものから「あんなに高い野菜を買いたい奴らは買ってればいい」「自分は良いことをしているという満足感のために金を出してるんでしょ」というものまで様々です。


○オーガニックを陰謀論にはしたくない


自然は健康にいいはず。実験室や工場で作ったものより、青空の下で、大地の上で作ったものの方が体にいいはず。人間はもっと地球に寄り添って生きなくては——と、そう思いたいのは、動物としての人間の本能みたいなものかと思っていました。けれどもそれは科学的な裏付けのない思い込みに過ぎないという論文を前に、かなり心がざわつきました。自分が、できるだけ無農薬・無添加の食品を選んで買っていたのは、思い込みからなのか、経験的にそっちの方が体調がいいからなのか(後者だと思うのですが、それさえもが思い込みだったら、もう出口がない。思い込みからくるプラシボ効果で体調が良くなっているんだという考え方もあるでしょうが)。


いずれにしても、FSA論文の精度を問うだけならともかく、「データが何といおうと、オーガニックは体にも環境にも優しいはずだから、データは信じない」という思い込みオンリーの反論を目にすると、ちょっと困ってしまいます。まるで自分が今までバカにしていた「陰謀論者」のひとりに自分がなってしまったような、実に居心地の悪い歯がゆい思いで。


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