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2009年8月2日日曜日

ジャガイモそうか病菌は飼料利用した後で死滅するか

ポイント:
ジャガイモの病気であるそうか病の菌が、飼料として利用された後の堆肥に残っていなければ、その堆肥をジャガイモ畑に戻せるかどうか、ということが重要。


でん粉粕中に存在するジャガイモそうか病菌の飼料利用場面における動態 
: "成績概要書 (2007年1月作成)
in 北の農業情報広場

課題分類:
研究課題:でん粉粕中に存在するジャガイモそうか病菌の飼料利用場面における動態
(予算課題名:道内農産副産物を利用した資源循環型畜産技術の開発
2)でん粉粕の畜産的利用におけるそうか病菌の動態解明と伝搬防止技術の開発)

担当部署:道立畜試・畜産環境科、十勝農試・病虫科
協力分担:なし
予算区分:受託
研究期間:2004~2006年度(平成16~18年度)




1.目的
ばれいしょでん粉の製造工程で発生するでん粉粕には、ばれいしょの難防除病害であるジャガイモそうか病菌が含まれることが知られている。このため、飼料利用によるそうか病菌の拡散の懸念が利用促進の妨げの一因となっている。そこで、飼料利用場面におけるそうか病菌の動態をサイレージ発酵、牛消化管内および堆肥化過程についてそれぞれ検討する。

2.方法
1)道内でん粉工場のでん粉粕中ジャガイそうか病菌数
2)でん粉粕のサイレージ発酵過程におけるそうか病菌の消長   
3)牛消化管内におけるそうか病菌の消長
4)牛ふんの堆肥化過程におけるそうか病菌の消長

3.結果の概要 
1)調査した道内4地域のでん粉工場いずれのでん粉粕からもそうか病菌が検出された。その菌数は、4×102~4.3×103/g(検出限界3×102/g)であった。
2)-(1)でん粉粕中のそうか病菌はサイレージ発酵過程で死滅することが明らかになった。そうか病菌は貯蔵温度が高いほど短期間で不検出となり(表1)、一定の温度と日数(4℃・29日、
15℃・22日、25℃・7日)を経たでん粉粕サイレージを土壌に混合してばれいしょを栽培してもそうか病の発病はみられなかった(表2)。サイレージ発酵過程における有機酸の生成と
pHの低下(図1)がでん粉粕中そうか病菌の死滅に関与することが示唆された。
2)-(2)カビ抑制や栄養価改善を目的としたでん粉粕への尿素添加は、多量に添加するとpHが低下せずにそうか病菌が生残する場合があった。しかし、カビ抑制や栄養価改善に適当とさ
れる添加量(表面添加:100g/m2、混合添加:0.5%)では、無添加と同様にサイレージ発酵の進行に伴いそうか病菌は不検出となった。
2)-(3)水分調整を目的としてビートパルプをでん粉粕に添加してサイレージ化すると、pHは無添加に比べやや高まったが、そうか病菌は無添加と同様に減少して不検出となった。
3)-(1)培養したそうか病菌を混和した飼料、またはそうか病罹病いもで作成したでん粉粕を牛に給与しても、ふん便からそうか病菌は検出されなかった。また、得られたふん便を原料とし
た堆肥を土壌に施用してばれいしょを栽培しても、そうか病の発病は認められなかった(表3)。
3)-(2)そうか病菌は第一胃内容液(pH6~7)中では顕著な菌数変化は見られなかったが、十二指腸内容液(pH2.4)中では指数関数的に減少した(表4)。
4)そうか病罹病いも由来でん粉粕とふん尿との混合物サンプルを堆肥に埋設し、切返し時に回収した混合物サンプルからそうか病菌の検出を行ったところ、50℃・5日以上の発酵熱に曝
さらされた箇所では検出されなかった。さらに、この混合サンプルを土壌と混和してばれいしょを栽培したところ、そうか病の発病は認められず堆肥化過程での死滅が確認された。


でん粉粕中のそうか病菌はサイレージ発酵過程および牛消化管内で殺菌作用をうけて死滅することが明らかになった。また、堆肥化熱による殺菌効果も期待される。以上のことからでん粉粕の飼料利用によりそうか病菌が拡散するリスクは極めて低いことが示された。




4.成果の活用面と留意点
1)本成果は、でん粉粕の飼料利用によるジャガイモそうか病菌拡散防止対策の参考とする。
2)でん粉粕の飼料利用場面でのそうか病菌拡散リスクを低減するには以下の点に留意する。
①でん粉粕は良質サイレージ化をはかり十分にサイレージ発酵が進行したものを給与する。
②カビ抑制や栄養価補給を目的とした尿素添加は適添加量(表面添加: 100g/m2、混合添加: 0.5%)を遵守する。
③変敗して廃棄するでん粉粕を混合した堆肥は通常の堆肥とは別に貯留・堆肥化し、草地・飼料畑に散布する。
3)ジャガイモ塊茎褐色輪紋病の病原ウイルスを媒介するジャガイモ粉状そうか病菌は、耐久体を形成し他の病原菌と比較して熱などに対する耐久性が高い恐れがあることから、病原を
拡散させないためでん粉粕を給与した牛のふん尿堆肥は草地に還元し、当面畑地への還元を避ける。

5.残された問題とその対応
1)ジャガイモ塊茎褐色輪紋病の病原ウイルス(PMTV)を媒介する粉状そうか病菌のでん粉粕中における存否解明とその飼料利用場面における消長"


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