敬意を払うべき農業
in 宮城 農業ニュース 毎日新聞 2008年5月25日 地方版
2008年05月25日
「生きている化石」と呼ばれるカブトエビの大発生で知られるようになった涌谷町の米作農家、黒澤重雄さん(61)。今年の栽培面積は35ヘクタールだそうだ。自己所有と耕作請負が半々。個人経営としては県内有数の規模だろう。
そのすべての田で農薬や化学肥料を使わない。肥料は稲わら、もみ殻、干し草主体の自家製堆肥(たいひ)と一部有機肥料。では、除草はどうするのか。除草剤を使うわけにはいかない。
後継者の長男伸嘉さん(31)とともに地元の農機具メーカーに相談して条間(苗列と苗列の間)ばかりでなく、苗の株と株の間の雑草も取り除く除草機を実用化した。乗用式で、10アール当たりの除草時間は7~8分と効率的。どの田も複数回の除草が可能になった。全国でも1台だけという。
仕組みは繊細で、土の硬い田ではあまり機能しない。トロトロの軟らかい土で威力を発揮する。
黒澤さんは祖父から自然型農業の心を教わり、三十数年間、土作りに励んできた。トロトロの土はそのたまものであり、カブトエビは米の安全を示す自然の恵みだ。首都圏の生協、県内スーパーなど開拓した出荷先からは厚い信頼が寄せられる。
自然と相談し、自然を尊重しながら農作業の効率化を図る黒澤さん。減反はしないし、農協との取引はない。国の営農補助金も受けない。「認定農業者」でもなんでもないが、「独立自営農民」の気概がある。
低米価、高齢化、後継者不在で衰退する農業、農村にあって実質的な支え手の1人だろう。どんな農業に敬意を払うべきか、消費者も知って損はないと思う。【小原博人】
毎日新聞 2008年5月25日 地方版"
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