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2010年3月17日水曜日

サツマイモの保存法、農業ではキュラという手法を使う

ポイント:
農業従事者がサツマイモをどのように保存するか。興味深い。
たしか、農協がまとめて処理しているが、一般農家でもできる方法が再検討する必要がある。

Q
サツマイモについての質問です。そろそろ収穫の時期なのですが、時間が無くて掘りおこすことができません。このまま11月まで置いておいていいのでしょうか(味と品質の面で)あと、もし掘りおこしたらいいのであれば、保存はどうしたらいいでしょうか?以前掘りおこしてそのまま部屋に置いておいたらすぐに腐ってしまいました。質問は2点です。そのまま畑に置いておいたほうがいいのか?掘りおこして保存しておいたほうがいいのか?その場合の保存法は?です。ご回答、よろしくお願いいたします。

A
http://www.ne.jp/asahi/cats/meow/spwine/spwine.htm
Wataru's Bar [Sweet Potato Wine]

 サツマイモは気温で腐敗程度が変わります。
地方が何処か判りませんが、気温が高い所なら11月でも大丈夫です。
掘ってから太陽に日向ぼっこさせて干すと芋の糖分が上がり美味しくなります。
冬の保存は普通籾殻等に入れて暖かい場所に置いておけば冬は越しますが、気温が低い地方は腐ってしまいます。
冬越しには10度以上の気温が必要ですから、10度以下で長時間置くと腐ります。
5度以下でも短時間なら持ちます。
ちなみに私は10月10日前後に掘る予定で、掘ってから太陽に日向ぼっこをさせて乾燥させます。
冬の寒さで美味しくなります。
真冬はダンボール箱に入れて、家族が暮らすストーブで暖房してある部屋に保存して置くと、冬を越して春にその芋を植え着けます。
真冬でも暖房の効く人が住む部屋に置いておけば冬越しします。
毎年そうしています。
尚、掘ったら芋を乾燥させて下さい。
湿っていると早く腐敗します。
水分が芋を冷却するのです。
味の面、品質の面、保存の面全てにおいて、乾燥が重要です。
保存した芋の中に1本だけ腐敗すると、その水分が他の芋も腐敗させますので、腐敗芋は取り除いて下さい。
充分に乾燥させてあれば10度以下でも保存出来ますが、やはり人が住んでいる環境に保存して下さい。
 湿度、気温、そして時間が関連します。 お分かりでしょうか?
最後に営農者はキュラという方法で冬越ししています。
掘った芋を30度の水蒸気に約30分間合わせます。
その後乾燥して普通の部屋で保存します。
この場合は室温5度でも冬越しします。
只、一般的でないので参考までに。
芋も暖かい部屋で保存して欲しいですよ。 



2010年3月16日火曜日

イモ焼酎糟を飼料化する乳酸発酵技術

ポイント:
すでに海洋投棄が禁止されている焼酎糟。
それを飼料化する技術。


甘藷製焼酎粕の乳酸発酵による保存性向上と給餌試験
明石酒造株式会社 宮崎県畜産試験場 宮崎県食品開発センター応用微生物部

2 甘藷製焼酎粕の乳酸発酵に適した乳酸菌の選抜
焼酎粕に市販サイレージ添加用乳酸菌製剤をスターターとして加えて乳酸発酵させたときの乳酸
生成量を下表に示します。炭素源を補うために、廃糖蜜を2%添加させて発酵させましたが、特にセルラーゼを含む乳酸菌製剤アクレモコンク(雪印種苗株式会社製)を使用した場合、甘藷由来のセルロースも炭素源として利用できるとともに、甘藷製焼酎粕特有の高い粘度も低下させることができ、ポンプ輸送も容易になるという結果が得られました。


3 乳酸発酵焼酎粕の保存性
焼酎粕は、蒸留終了後放置するとすぐに腐敗し、悪臭が発生します。しかし、乳酸発酵処理を行った焼酎粕では、発酵終了後4週目までは成分の変化はほとんどなく、悪臭も発生しませんでした。ただし、保存時間の長期化とともに次第に乳酸濃度が減少し、かわりに酢酸濃度が増加してきました。そして17週目以降は揮発成分が増加し、刺激のある酸臭の発生が見られました。以上のことから、焼酎粕は乳酸発酵処理により、最低4週間程度の保存を可能にする有効な手段と考えられました。


4 甘藷製焼酎粕の給与試験
 発酵開始から4日後には約2.1%の乳酸が生成しており、十分に乳酸発酵が進んだことが確認されたため、直ちに畜産試験場に運搬して黒毛和種繁殖牛14頭(7頭対照区)による給与試験を実施しました。その結果、サイレージ給与牛と比較しても劣らないことが判りました。



2010年3月15日月曜日

ダイズ栽培、日本国内の各地域向けに解説したページ(3)

ポイント:
ダイズ栽培の第3段。
成功事例と、栽培に適した気候、その他について



・近畿中国四国地域における大豆栽培の優良事例

滋賀県五個荘町におけるキーテクノロジーを組込んだ省力多収栽培事例
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/gichou/agrokey/jirei/kinki/shirodaizu/PAGE001.HTM

兵庫県山崎町におけるキーテクノロジーを組込んだ黒大豆の省力多収栽培事例
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/gichou/agrokey/jirei/kinki/kurodaizu/PAGE001.HTM

岡山県総社市における大豆不耕起播種の取組み事例
 http://www.kanbou.maff.go.jp/www/gichou/agrokey/jirei/tyuushikoku/daizu/PAGE001.HTM



大豆品種の育成

 大豆は麦と比べて気候的な適応範囲が狭い作物です.大豆の開花成熟は日長に敏感で,日長は緯度によって決まります.タマホマレはこの地域 に適した品種ですが,この品種を育成地である長野県で栽培すると生育が旺盛になりすぎ,熟期が遅くなりすぎます.タマホマレを九州で栽培すると逆に生育が 貧弱になり,熟期が早すぎ,収量が上がりません.したがって,この地域に適した品種を効率的に育成するためには,この地域で育種を行う必要があります.こ のような背景から平成13年度に大豆育種研究室(香川県善通寺市)が設置され,近畿中国四国地域に 適した品種の育成に取り組んでいます.



ダイズ栽培の具体的事例研究
丹波黒大豆莢乾燥のためのエダマメ用莢取機の改良とその利用(京都府,平成9年度成果情報)
  http://www.cgk.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h9/sakumotu/cgk97014.html

全自動移植機利用のための黒ダイズ(丹波黒)の根鉢形成法(奈良県,平成10年度成 果情報)
 http://www.cgk.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h10/sakumotu/cgk98033.html

弱毒ウイルスの利用による丹波黒系エダマメの莢茶しみ症の防除(京都府,平成10年 度成果情報)
 http://www.cgk.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h10/kankyo/cgk98060.html

VA菌根菌資材利用による黒大豆の増収技術(京都府,平成10年度成果情報)
  http://www.cgk.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h10/kankyo/cgk98069.html

全自動移植機利用のための黒ダイズの育苗技術(奈良県,平成11年度成果情報)
 http://www.cgk.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h11/sakumotu/cgk99043.html

丹波黒大豆のコンバイン年明け収穫技術(京都府、平成14年度成果情報)
http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/kinki/ki191.html


丹波黒大豆エダマメ食べ頃が一目でわかるスケール(兵庫県、平成14年度成果情報)
http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/kinki/ki208.html

丹波黒大豆エダマメの短期間の短日処理による早期出荷(岡山県。平成14年度成果情報)

http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/kinki/ki225.html

ダイズモザイクウイルスの外被タンパク質遺伝子を導入した形質転換体の作出法(京都府、平成13年度成果情報)
http://wenarc.naro.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h13/seibutu/we13019.html

効率的なダイズ形質転換体の作出法
http://wenarc.naro.affrc.go.jp/dbase/seika/nendo/h13/seibutu/we13013.html


2010年3月14日日曜日

ダイズ栽培、日本国内の各地域向けに解説したページ(2)

ポイント:
前回お知らせしたダイズ栽培法の続き。

大豆 栽培ホームページ (近畿中国四国地域版)
・機械化適性
 栽培性に関しては,莢は熟しているのに茎葉がいつまでも青々していて収穫できない(莢先熟),収穫前に莢がはじけて実が落ちてしまう(裂 莢),地面から一番下の莢までの高さ(最下着莢高)が低いために刈り残しが発生する,などの点を改善することが育種上重要な課題です.また当地域の大豆は ほとんどが水田転換畑で栽培されているため,湿害が大きな問題となっており,立枯性病害も発生しています.生育を旺盛にし収量を高めるためには地力が重要 であり,施肥の効果は判然としていませんが,地力の向上は一朝一夕にはできないので,施肥技術の確立も求められています.

大豆のコンバイン収穫マニュアル
http://www.maff.go.jp/work/combime/INDEX.html

・不耕起 栽培
 近畿中国四国地方では6月下旬から7月上旬は降水量が多く,梅雨明け後の播種では生育量が確保できず多収は望めませんので,6月中旬が播 種適期となります.天候が不順でも適期に播種するためには不耕起播種が有効ですので,不耕起播種機の開発に加えて不耕起栽培向きの品種開発も必要となりま す.収穫は麦の播種期(11月中旬)の前に行う必要がありますが,開花成熟が早ければ早いほど高 温・多雨下で登熟することになり,品質が低下しやすくなります.品質と収量の安定性を低下させずに収穫時期を早めることも重要な課題となります.

中耕ロータリを利用した大豆のトリプルカット不耕起播種機(近農研、平成14年度成果情報)

http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2002/kinki/ki028.html
もっと 詳しく知りたい!

大豆の不耕起播種技術マニュアル
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/gichou/agrokey/notillsoy/notillsoy.htm



2010年3月13日土曜日

ダイズ栽培、日本国内の各地域向けに解説したページ(1)

ポイント:
ダイズはその根に根粒バクテリアを集め、窒素肥料を自家生産する。
そのため、地力が落ちにくい作物だ。
どちらかというと、手間もかからない作物だが単価が安いため商品価値が低い。
だが、輪作するためには不可欠だ。
地域ごとに栽培方法を解説している貴重な情報をお知らせする。


「大豆を作ろう」Home Page
大豆を栽培してみようという農家の方々の 
参考になるホームページをめざしています。

大豆栽培ホームページ (近畿中国四国地域版)
大豆栽培上の問題と参考技術

・病虫害
病虫害に関しては,他の大豆産地と比べてウイルス病や線虫の発生は少ないものの,白絹病や黒根腐病のような立枯性病害の発生が多くなっています.立枯性病害に関しては耕種的な防除が最も有効です.

紫斑病
無病種子の使用,種子消毒,殺菌剤の散布
従来使用されていたチオファネートメチル等に耐性を有する紫斑病菌が拡がっており,耐性菌に対してはベルクート水和剤やゲッター水和剤が有効

白絹病
輪作,播種前の湛水,罹病株の抜き取り,殺菌剤(フルトラニル等)の株元散布

ウイルス病
無病種子の使用,罹病株の抜き取り,アブラムシの防除


鳥害
集団化と一斉播種,麦収穫直後に播種,麦わら被覆,忌避剤の粉衣

獣害
トタンや電気柵で囲う(通年,補修を怠らない),忌避剤(結実~収穫期のみ),周囲の草刈り


近畿中国四国地域の主な害虫と防除

近畿中国四国地方における主要な害虫は、莢・子実を加害するシロイチモジマダラメイガ、マメシンクイガ、マメヒメサヤムシガ、ダイズサヤタマバエ、カメムシ類、、葉を加害するハスモンヨトウ、ハダニ類、アブラムシ類、芽生えを加害するタネバエなどである。これらの害虫は地域によって主要種、発生量、発生時期が異なるため、各府県の防除指針に従って適切に防除を実施する。


主要害虫
シロイチモジマダラメイガ
 成虫は5~6月、6月中旬~7月中旬、8月、9月上・中旬の4回発生し、莢や莢近辺に産卵する。ふ化した幼虫は莢内に食入して子実を食害する。被害は第2回成虫、第3回成虫によるものが大きい。成虫による産卵時期とふ化幼虫の莢食入時期が防除適期である。

マメシンクイガ
 成虫は8~9月に発生し、莢、托葉に産卵する。ふ化幼虫は莢に食入し子実を食害する。山間部などの低温地帯で発生が多い。産卵、ふ化幼虫の莢食入時期の成虫発生期から若令幼虫期にかけて防除を実施する。
マメヒメサヤムシガ
 第1回成虫は4月に発生し、年に3~4回発生する。ダイズでは8月~10月にかけて発生する第3回、第4回成虫による被害が大きい。若葉に産卵し、着莢以前は若葉を綴って食害する。着莢後は莢を綴り合わせ、莢や子実を食害する。若葉を綴る初期被害に注意し、着莢後の食入を防ぐ。

ダイズサヤタマバエ
 成虫は5~6月から晩秋にかけて発生する。開花後の稚莢内の子実付近に産卵し、ふ化幼虫が加害する。被害を受けた莢は一部がふくれ、虫えいとなる。開花後期から莢伸長初期が防除適期である。

カメムシ類
 吸実性カメムシとしてホソヘリカメムシ、アオクサカメムシ、イチモンジカメムシ、ブチヒゲカメムシなどが主要種である。莢の伸長初期から子実肥大期にかけて防除する。

ハスモンヨトウ
 年5~6回発生し、8月~9月以降に幼虫が葉や若莢を食害する。ふ化幼虫は卵塊付近で集団で葉肉を食害する。発生初期の若令幼虫期が防除適期である。

アブラムシ類
 ダイズアブラムシ、マメアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシなどの寄生が多い。ダイズアブラムシは5月から有翅虫が飛来し、6~7月にかけて増殖し、8月から9月に多い。ダイズモザイク病ウイルスを媒介する。ウイルス病防除のためには播種時に薬剤施用するなど、初期の防除が重要である。

タネバエ
幼虫が発芽中の種子や芽生えを食害する。土壌の湿度が高かったり、有機物含量が多いと発生しやすく、比較的低温条件を好むため、4~5月に多い。播種時に粉剤等を土壌施用する。

2010年1月19日火曜日

シシトウの病気を防ぐ根洗いの方法

ポイント
高知では、現金収入が得られる貴重な作物であるシシトウ。
意外な方法でその病気を防ぐ方法がある。詳しくはリンク先をご覧ください。


月刊 現代農業4月号 野菜・花/追究! 病気を防ぐ根洗い

"追究! 病気を防ぐ根洗い
たまげるほど
シシトウが成った
新潟県潟東村 岩野テルさん


「えー! そんなに根を出したら、枯れちゃうよー」
「ううん。思い切って根を出したほうが枯れなくなるのよ」
浅植えした後、株元の根っこを洗い出す「根洗い」が、お母さんたちにも好評だ。
 ますます広がる根洗いだが、今回はそこで何が起こっているのか、失敗しないためにはどこに気をつけたらいいのか、などを探ってみました。

 ここは新潟県の潟東村。稲作中心の兼業地帯である。お父さんのほとんどは勤めているので、ふだんの畑仕事はお母さんたちの役目だ。この辺りでは昔からシシトウ栽培が盛んで、現在、栽培農家は潟東村で20人、隣の巻町で19人、その隣の岩室村で13人ほどいる。

 岩野テルさん(60歳)もそんな中の1人。お父さんの熊雄さん(62歳)は年じゅう勤めに出ているので、テルさんが1人でおよそ100本足らずのシシトウを栽培している。すでに栽培歴は20年にもなる大ベテランだ。  
 そんなテルさんがシシトウの立枯れと奮闘し、大成功をおさめている。


立枯れは毎年恒例だった

 テルさんは立枯れを防ぐため、イネの育苗ハウスとシシトウ専用ハウスの2つのハウスを持ち、毎年交互に場所を替えている。さらに、農協や普及センターの指導どおり、秋には土壌消毒をし、定植後には株元にリドミル粒剤をまいている。それでもシシトウは枯れた。
 「4月に植えて、8月末ごろになるとバタバタと枯れてくる。最初は1本がくたーっとしてきて、それが次々と移っていって10日ぐらいして完全に枯れてしまう。株元をよく見ると黒くなってる」
 「もう毎度のことで、おー始まった、今年は何本枯れるかなという感じ。そのせいで、本当は十月までとれるのに、そのまま8月いっぱいで終わっちゃう人もいるくらい」
 こんな調子でシシトウの立枯れは毎年の恒例、最近はお母さんたちも、なかばあきらめ顔だったようだ。

立枯れ対策に根洗い

 しかし、テルさんは違った。
 「枯れてスカスカになったハウスじゃみっともない。女はもうけがあるなしよりも、枯らさないことのほうが大事」
 とにかく無事枯れず、最後までもってほしい――。その一心で、3年前、テルさんは村の肥料屋「新潟ハツタサービス商会」が開いた「シシトウ栽培講習会」に参加した。テルさんは、そのとき初めて、立枯れ対策に「根洗い」というやり方があることを知った。
 根洗いとは、肥料メーカーのジャットなどがすすめている技術で、「深植えしないで浅植えをし、しばらくしてから、株元を根が出るまで洗い流す」というものだった(2001年4、9月号参照)。
 講習会は、新潟ハツタサービスが(株)ジャットの代理店をしていたため、肥料を売るということもあったが、新潟ハツタサービスの社長である笹崎弘さんがその根洗いに惚れ込み、立枯れに悩むお母さんたちにぜひ広めたいという思いで開かれたものだった。

根を出すなんて、おっかない

 テルさんは根洗いの話を聞いて心が動いたが、その年は根洗いをしなかった。「根を出すなんて、おっかない」「逆に枯れてしまうのではないか」と心配だったし、何より根洗いのときの水に混ぜる肥料などにお金がかかるのがいやだった。
 しかしテルさんは、あるハウスに植わっているシシトウが気になっていた。そこは「おっかながる」お母さんたちになんとか根洗いをやってもらおうと、笹崎さん自身が妹さんのハウスを使って根洗いの実験をしていたハウスだった。このシシトウが枯れていなかったのだ。

いくらかかるの?

そこで、テルさんは笹崎さんに交渉した。
 「根洗いをしてみたいんだけど、ランドライフとか肥料とか安くしてよ。金がかかるならしないよといったの。納得できる金額にならんとやらんぞって」
 その結果、交渉の甲斐あって、ハツタサービスが除塩・土壌膨軟剤のランドライフを小分けして売ってくれることになり、根洗いにかかるお金はランドライフとダコニールでおよそ1回2000円ですむことになった。テルさんは、これで「やる気になった」。

2回の根洗いで、たまげるほど成った!


根が酸素欠乏で養分吸えない元気のない地上部に病原菌侵入樹が長持ちしない   酸素がいっぱいで根も地上部も元気病原菌がいても侵入しにくい
(図1)テルさんの根洗いのやり方

  ハツタサービスの講習会を受けた翌年、今から2年前、テルさんは初めて根洗いをした(図1)。
 定植は4月10日ごろ。これまで植え付けの深さを意識したことはなかったが、このときは浅植えを心掛けた。だが、植え穴は手を使わず穴開け器を使って掘るので、うまく浅植えできたかどうかわからなかった。とにかくその後、40~50日くらいたった日曜日、熊雄さんに手伝ってもらい、動噴で根を洗った。「植えてすぐ枯らすつもりか。やめれ、やめれ」と言う熊雄さんに、「枯れたらダイコンでも植えればいい」と押し切り、おっかなびっくり洗ってみた。しかし、やさしく洗ったので、実際は部分的にしか根は出なかったようだ。
 それでもそのうち、部分的に出た根に日が当たると、そこが緑色に変わってくるのがわかった。そして、6月の初めごろから勢いよくシシトウが成りだした。出だし好調だった。
 ところが、この年は雨の多い年だった。その後、大雨がふって、まる1日、ウネが水浸し。しかも水が引いて日が照ったと思ったら、シシトウが全部くたーっとなってきた。「これはいかん!」とテルさんは思い、今度は思い切って根を洗い出すように、もう1回、6月末に根洗いをしたのだった。
 その結果、その後のシシトウは「たまげるほど成った、成った」。なんとその年は十月末までシシトウは1本も枯れず、成りつづけた。結局、60万円以上を売り上げ、農協から総売上賞までもらったのだった。
 去年も根洗いは1回しただけだったが、やはり10月の末ごろになって少し枯れたぐらいですんだ。
 そんなわけでテルさんのシシトウはここ2年枯れていない。しかも、成りもよくなったようだった。

根洗いは根の呼吸をよくする
地上部を元気にする

こんなに効果てきめんの根洗い、いったい何が起きているのだろうか。
 テルさんはこんなことを言っている。
 「根洗いすると、なぜか株元や根が大きく太ってくる。根が光に当たって強くなるんじゃないの」
 テルさんにすすめた笹崎さんはこう言う。
 「理屈はわかりませんが、私の経験から言っても、カキとモミジは、株元に土を盛ると枯れて、取り除くと元気になります。元気に育っている山の老木は根が出てるでしょ。あの理屈です」
 その理屈とは、どんなものか。
 植物の根はみな、土の中の水に溶けた酸素を吸っている。根も呼吸をしているのだ。ところが、この水や酸素が根のまわりに不足すると、根は呼吸ができなくなり、養分も十分に吸えなくなってしまう。
 そう考えると、カキとモミジが株元に土を盛ると枯れるのは、根が酸素欠乏を起こして養分を吸えなくなってしまった結果であり、反対に土を取り除くと元気になるのは、根が呼吸しやすくなり、養分をよく吸収できるようになった結果とは見れないだろうか。元気に育っている山の老木は根が出ているのも筋が通る。
 テルさんのシシトウが根洗いによって枯れなくなったのも、こんな理由とは考えられないだろうか(図2)。

図2
(図2)深植えしたシシトウと根洗いしたシシトウの生育の違い

 根洗いするまでは深植えだったかもしれず、天候や土の状態により、根が呼吸しにくく養分も思うように吸えない環境におかれることが多かった。だから地上部も元気がない。そんなときには立枯れ性の病原菌が侵入しやすく、発病しやすかった。反対に、根洗いしてからは、天候や土の状態に関係なく、根が呼吸しやすく養分も十分に吸える環境におかれる。地上部は元気に育つため、病原菌がいても侵入を未然に防ぐことができる。

深植えが悪い理由

 さらに、植え付けの深さとも関係がありそうだ。
 茨城県波崎町のピーマン農家、長谷川裕之さんは、「深植えをすると、不定根(茎から出る根)が出る。不定根は浅根になりやすいし、リン酸・カリの吸収が悪い。だからチッソばかり吸収しやすく生育のバランスを崩しやすい」といい、浅植えをしている。
 また、山形県村山市のスイカ農家、門脇栄悦さんは、「本来根の出る茎元からでなく、土に埋まった部分からならどこからでも出る不定根は上根にしかならない。上根が張ると初期生育はいいかもしれないけど、絶対に樹が長持ちしない。異常気象にもやられやすいし、夏の暑さを持ちこたえるのが大変だ。不定根を出させず、直下根をなるべく深く土の中へ入れることだ」といい、鉢上げのときに浅植えして、根を露出させる蕫根上がり育苗﨟をしている。
 株元が土に埋まると出やすい根、不定根の存在も、地上部の調子を悪くさせる原因となっていそうだ。

1本枯れると7000円の損

 さて、根洗いはもうけも増える。テルさんは「もうけより枯れないこと」というが、テルさんに根洗いをすすめた笹崎さんはいう。
  「1本枯らすと7000円の損ですよ」
 シシトウはひと株当たりだいたい3000果とれるといわれる。ひとパック30本入りが100パックとれ、ひとパックが70円平均だとして7000円なのである。まったくバカにならない。
 だからこそ、一昨年のテルさんのシシトウの成りっぷりは噂を呼び、バスで視察者も訪れたという。隣の巻町でもお母さんたちが根洗いをしている。お母さんたちの間で根洗いは静かなブームになりつつある。